Q9 修正はんだ付けしたトランジスタのリードで導通不良が発生しました。原因とメカニズムを教えてください。

ANSWER

1.観察のポイント

アッセンブリ全体の写真aを見ると、フライバックトランスの周辺で基板表面が発熱で色が濃くなっているのが分かります。濃くなっている面積は広くアッセンブリ全体が発熱状態になっていました。

噴流はんだ付けの状態をチェックすると、写真bに示したように、全体的にはんだ付け性は良好ですが、はんだ量が少ないのが特徴で、しかもクリンチとは関係なくはんだ量が少なくなっています。それが原因ではんだ割れの状態が確認できます。これははんだ付け性を優先し、活性力のあるフラックスを用いてはんだ付けしたことになります。この結果、はんだの切れが良くなりはんだ量が減少したものです。

写真cはトランジスタの放熱板ですが、この白い接着剤の跡を見ると接着剤の量も少ないのが分かります。これは放熱板とトランジスタとの接着不良で放熱効果が低下し、はんだ付け部が熱を持つことになります。はんだ付け部加熱を持つと、はんだ自体の強度は小さくなります。部品と放熱板が基板面にしっかり固定されていない場合は放熱板の重量も加算され、フィレットは重量に耐えられなくなり、亀裂が発生してさらに発熱し、はんだ付け部が溶融することになります。

この結果、写真dに示したような導通不良が発生し、細部では写真eに示したようにはんだが再溶融した状態が確認できます。参考までに撮影の状態を写真fに示します。

ここで問題になるのが、フライバックトランスのはんだ付け部です。この箇所にはハトメはされていません。写真g,hに示したように、フライバックトランスのはんだ付け部では欠陥は確認できません。噴流はんだ付けでははんだ量は少なくなっているので、フィレットの高さとはんだ量を確保するために盛りはんだが行われ、現状のフィレットになっています。

 

 

 

 

 

 

この点について、さらに写真eを観察すると、リードの光端は写真iに示したように、噴流はんだ付け時にはんだが濡れていたことが分かります さらにリードは確認できる側面全体が噴流はんだ付けで良く濡れています。これは、はんだ付けに対するリードの表面に欠陥が無かったことを断定するものです。

しかし、やに入りはんだのはんだ付けでは、リードの側面は先端から最下部の溶融箇所まではじいています。噴流はんだ付けのはんだが修正のはんだ付けで融合した形跡はありません。

2.発生のメカニズム

したがって、なぜフライパックトランスでよくてトランジスタで悪かったのかですが、これには2つの問題点があります、使用したやに入りはんだにフッ素系の活性剤が入っていたことにより、初期はんだ付けが大変良好であったこと。次に、トランジスタのはんだ付け箇所はフライバックトランスと比較して熱容量が小さいため、コテにはんだを差した瞬間、はんだが溶融したこと、などが挙げられます。

フラックスは化学反応により酸化物を除去しますが、言葉で「化学反応」と言っても、この語句には温度と時間の因子が含まれています。これはトランジスタのはんだ付けでは化学反応の時間が足りなく、リードに熱が十分供給されなかったことになります。

一方、フライバックトランスのはんだ付けでは熱容量が大きいので、作業者はコテを当てている時間が長く、リードにも十分熱が供給され、その結果はんだ付けが確実に行われたことになります。

はんだ付けは、コテを当ててはんだが付けばよい、というのではなく、基本的な原理を理解して初めて信頼性の高い接合が得られます。本不具合は、生産性が信頼性を犠牲にした結果ということになります。

3.原 因

①.トランジスタの放熱板の接着不備。

②.作業者の認識不足による修正はんだ付け時の熱不足。

4.対 策

いずれの場合も作業基準を作成して徹底させることが大切です。今回の事故は、はんだ付け性が良すぎるやに入りはんだを使用し、その結果、熱不足を招いてはんだ付け不良に至っています。一般には考えられない事故ですが、作業者はこの点についての問題意識はありませんから、当然事故の発生件数は多くなります。

これは単に実装ライン作業者の認識不足によるものではなく、メーカーにおいてもはんだ付け性が良すぎれば当然起こり得る事故なので、メーカーが事前に注意の伝達をすべき内容と言えます。

実装ラインにおいては、このようなタイプのやに入りはんだを使用するに際し、実作業のあり方を見直し、作業のポイント、注意点さらに正常と不良の確認についての講習とはんだ付けの基本について再指導することが望まれます。

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