2.不良解析に役立つはんだ付けの着目点

2.1 立体的構造物とはんだ付けの障害

どのように小さな接合邦であっても、はんだ付けは立体的構造物を造る技術です。立体でとらえることで、熱の伝達の道筋が読めます。この道筋こそ溶融はんだの通り達になります。この通り達にはいろいろな障害があり、それがはんだ付け不良、市場での不具合の原因となっています。

これまで手掛けた多くの不良解析の結果、障害は、”温度(熱)”、”汚れ”、”力”の3因子に大別されることが分かります。

2.1.1 障害の1「熱の伝達」

噴流はんだ付け用基板のスルーホールを平面図で描くと、図4となります。これを立体で描くと図5(a)となります。回中Aのスルーホールの大きさはBより小さく、予熱ゾーンに入るとAは先に温度が上がります。したがって、AはBの熱の供給源となり、Bに向かって熱が移動します。結果としてAは温度上昇が遅れます。

一方、図5(b)では図5(a)と同じ大きさのスルーホールのAがありますが、これにはさらに小さなスルーホールBが接続されているので、Bが先に温度が上がりBから熱が供給されます。

 

したがって、同じ大きさのスルーホールであっても、温度の上昇に時間差を生じる結果となります。

回路設計では導体を長く引く場合があります。図5(a)のAはBに熱が奪われますが、図6に示したように、(a)から出ている導体が長く、基板上リフロー炉に侵入する先頭に位置していると、先に加熱されて熱が供給されます。この場合は図5(a)とは熱の流れが逆になります。

このように炉中をアッセンブリが通過するだけであっても、回路、部品、基板により熱の流れが変わります。熱の流れによりはんだ付け部の温度上昇に差が生じ、これが時間差となってはんだ溶融開始を遅らせることになってマンハッタン現象やリード浮きの原因にもなります。

 

2.1.2 障害の2「金属の熱伝導率」

はんだの通り道は金属があります。金属の性質の中でとりわけ熱の伝導率は、「熱不足、熱過多の原因」にもなる重要な因子となっています。黄銅は銅の約1/3の伝導率なので、黄銅のリード1本加熱するのと、同じサイズの銅を3本同時に加熱するのと熱容量は同じになります。したがって、銅をはんだ付けするのと同じ条件で黄銅にはんだ付けしますと熱不足が原因のはんだ付け不良になります。

このことは現場の作業者に限らず、回路設計あるいははんだ付け継ぎ手の設計をされる方も、理解しておかなければなりません。表4に金属材料の一般的な熱伝導率を示します。

このほか熱の伝導を妨げる金属側の因子は、金属表面の汚れ、酸化物、腐蝕生成物、蒸発物質(

化熱)、ゴミの介在)など等があります。

2.1.3 障害の3「はんだ付け部金属表面の汚れ」

はんだ付けされる金属材料の表面状態がどのようになっているかを知ることは生産性と信頼性の面からも重要になります。

私たちはほとんどの金属材料の真の肌を見ておりません。私たちが見ているのは、表面の酸化物と汚れになります。 10円硬貨は材質が銅なので、銅と言いますが、はんだ付けの立場で見れば表面は銅ではありません(写真13)。

 

 

 

 

 

 

表面を銅としてとらえるか、汚れとしてとらえるかは、はんだ付け性に直接関係するだけに重要になります。すなわち、表面を汚れとしてととらえれば、はんだ付け性は「障害」として認識され、改善しなければならないと判断できるようになります。しかし、現場では気付かない場合が多く、気付いても強く認識しないと、次の「改善」という行為に至りません。結果として、生産性と信頼性が向上しなくなります。図7は金属の断面を模擬的に描いたものです。

加熱をした場合、(a)は汚れと酸化物があるため、熱の伝達が悪く、(b)は熱の伝達が良いと理解できます。

同じチップ部品のはんだ付けでも、やに入りはんだでは、常に新鮮なフラックスがチップ電極の側面に供給されるので、電極部が少々酸化と汚れ状態になっていても、はんだ付け性は良好になります。 同様に、噴流はんだ付けでもフラックスは、はんだ付け部全面に塗布されているので、はんだ付けは良好になります。しかし、クリームはんだで改善しなければならないと判断できるようになります。しかし、現場では気付かない場合が多く、気付いても強く認識しないと、次の「改善」という行為に至りません。結果として、生産性と信頼性が向上しなくなります。図7は金属の断面を模擬的に描いたものです。

加熱をした場合、(a)は汚れと酸化物があるため、熱の伝達が悪く、(b)は熱の伝達が良いと理解できます。

同じチップ部品のはんだ付けでも、やに入りはんだでは、常に新鮮なフラックスがチップ電極の側面に供給されるので、電極部が少々酸化と汚れ状態になっていても、はんだ付け性は良好になります。

同様に、噴流はんだ付けでもフラックスは、はんだ付け部全面に塗布されているので、はんだ付けは良好になります。しかし、クリームはんだでは、印刷されたクリームはんだの表面にチップがは、印刷されたクリームはんだの表面にチップが載っているだけなので、はんだ付けされる電極側面にはフラックスが存在していません。したがって、前二者と比較するとクリームはんだは、はんだ付け性が悪くなります。金属の表面の汚れと酸化物は、このようにはんだ付け方法によって、はんだ付け性に影響が出やすくなります。

 

(1)汚れによるフラックス作用の低下

クリームはんだのようにフラックスは加熱により基板面から電極側面を這い上がって行きます。表面酸化物と汚れはフラックスで洗浄されることになっていますが、実際にはフラックスが這い上がって行くほど、フラックスの先端部は活性剤分が消耗し、しかも金属表面の汚れと酸化物を溶かし込むので、フラックスとしてのクリーニング作用は薄れてきます。

金属表面の酸化と汚れははんだ付け性ばかりでなく、クリームはんだの印刷量との絡みもあって、チップ浮き、チップ脇はんだボール等の不良の原因にもなります。

基板スルーホール内は洗浄が不十分になりがちです。イオン物質が洗浄不十分で残留した場合、汚染されていることになりますが、やがて写真14に示したように腐食に発展します。この基板を噴流はんだ付けしたのが、写真15(になります。このような原因で穴あきとなれば当然修正をして外観では穴あきは見えなくなりますが、スルーホール内部の腐食物質はフラックスでは除去できませんので、市場に出てはんだ割れ、多層基板では層間断線、フィレットが燃えるなどの事故に進展します。

(2)部品の酸化の追放

高密度実装になるほど僅かな酸化、汚れ、腐食が影響を与えるようになります。多くのはんだ付け専門書では「フラックスの作用」として「酸化物の除去」が記述されています。このため、「フラックスは酸化物を除去してくれるもの」と信じている方がいます。はんだ付け不良の原因には、フラックスの影響もありますが、あきらかにアッセンブリ上に搭載されている部品が原因の場合があります。特定の部品に限定してはんだ付け不良が発生しているのであれば、一般には、その部品のはんだ付け部が悪いと判断できます。その原因がはんだ付け部の酸化物によるものであれば、はんだ付け不良の改善として、まず、部品の酸化に照準を合わせなければなりません。

酸化の原因が受け入れ時にすでに確認できているのであれば、部品メーカーに改善させなければなりませんし、酸化が受け入れ後の保管状態で進行したのであれば、保管の場所、保管の方法を改善しなければなりません。はんだ付けの立場から、単に「はんだ付け性が良くなれば」と言う安易な考えで、はんだメーカーに対し、より強い活性力のあるフラックスを要求するのは誤りです。これは絶縁不良の原因にもなります。部品の保管に適している場所としては、次に列記するように、ゴミ、ほこり、水、発生ガス、光、カビ、虫などの影響を受けない場所が基本となります。

*雨風が直接侵入しない。

*直射日光にさらされない。

*床から少なくとも50cmの高さの棚の上。

*空調の風が直接当たらない。

*近くにゴミ箱がない。

*近くに水道、ガス湯沸かし器、石油系のストーブがない。

*薬品類が存在しない。

*できればクリーンルーム。

*保管場所では空気が停滞することなく、対流と換気が行われていること。

*実装ライン内での保管であれば、簡易クリーンルーム内か専用の収納庫の中。

 

保管上の管理は、

*専任の管理責任者を置き記録をつける。

*先入れ先出しの遵守。

*整理、整頓、清掃の徹底。

*誤って床に落下した場合の使用については、社内で判断基準を設けておく(長い時間床に放置しておくと吸湿の原因となります。特にコンクリートの床面には注意しなければなりません)。

写真16-21に示した一連の写真は入荷直後の未使用の部品です。酸化、異物の付着、変形など様々です。実装ラインではこれらがはんだ付け不良、部品浮き、はんだボール、剥がれ、部品ズレ、などの原因となり、修正の労力が増加します。はんだ付け不良は往々にして見逃される場合があり、市場に出ますと、はんだ割れ、発熱などにより導通不良となって機能が停止し、交通関係では暴走、人身事故、火災に及ぶ場合もあります。近年、保管も含め部品の状態の悪いのが目にとまります。

 

 

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